インタビュー

モンテッソーリ教師・保育士 長谷美有紀さん

イタズラも成長過程の1つ 子育てがもっと楽しくなる教育法

モンテッソーリ教育って何?

医師であり教育家であるマリア・モンテッソーリ博士が考案した教育法です。子どもは生まれながらに「自分で自分を育てる力=自己教育力」を持っています。歩行も「右足だして!」「左足だして!」と教えなくても、自然に歩くようになりますよね。モンテッソーリ教育は、大人の教育に当てはめるものではありません。子どもの自発的な動きや興味、発達段階によって、大人が正しく環境を整えることで、子どもの成長発達を促す、サポート的な教育法です。

 

モンテッソーリとの出会いは?

私が横浜で幼稚園教諭をしていた頃、モンテッソーリの研修会を受けたことがありました。そこで1番印象に残ったことは「言葉で伝えるだけでなく、大人がやって見せることが大切」ということ。当時年少の担任をしていたのですが、子どもたちに何度声をかけても、イスを持ち上げず、引きずりながら片付ける姿に悩んでいました。そこで学んだことをヒントに、改めて子どもたちに、私がイスを運ぶ姿を見てもらいました。そうすると、すぐにほとんどの子が持ち運ぶようになったのです。さらに、子ども同士で「こうやって運ぶんだよ!」と助け合う姿も。子どもたちは単純にイスを引きずった方が運びやすく、正しい運び方が分からなかっただけのようです。まさに目から鱗でした。子どもの力はすごいなと感じ、私はこの教育法に衝撃

を受け、自身の保育感が変わりました。

 

日常生活で実践できることは?

例えば、子どもが何でもポイポイ投げる姿をよく見かけます。これは本能的に「今この成長が必要だ!」と腕の筋力の発達を促している可能性があります。そういうときは、ボールなど投げても良い物を渡して、いっぱい遊んであげてください。他にも「なんでこんなことするんだろう…」ということを子どもはたくさんします。そんな時は、お子さんをよく観察してみてください。何に興味を示しているのか、どこの部分を伸ばそうとしているのかが分かります。ママがイタズラだと思うことも、実は子どもにとっては大切な成長過程の1つであることに気付けると思います。また、コップから飲み物をこぼすことに興味を持ってしまった場合、何度もされてしまうと、おかあさんは大変です。そんな時は「おしまいね。こぼれたね。濡れて冷たいね」と実況中継してください。自分が今何をしているのかがわかるようにしましょう。そして「布巾で拭くからね」と、どう対処するべきかも伝えていくと良いでしょう。代替の活動ができるように、注ぐ・あけ移す物を用意することで、子どもの興味や思いにも寄り添えます。

 

 

 

つい怒ってしまうことも。どうすれば良い?

子どもに注意しても、笑って何度も同じことを繰り返されて、困ることってありますよね。そういうとき、おかあさんが怒ったり困ったりする反応を楽しんでいる場合があります。今それをやられると困るという時は、淡々と対処するのがおすすめです。「こぼれたね」と言って、ササッと拭いて終わりにします。そうすると、子どもは「なんだ。これやっても楽しくないな。やらなくてもいいな」と、次第にその行動はなくなります。

 

頑張るママへメッセージを。

おかあさんは毎日大忙し。余裕がない時も多いので、常に正しい対応をするのは難しいです。でも、モンテッソーリ教育の概念を知っているだけで、「これは子どもにとって良い対応だったな」「今度はこうしようかな」と振り返ることができます。これは子どもだけでなく、ママにとっても大切なこと。もし、今子育てで辛い思いをしているお母さんがいたら、ぜひモンテッソーリ教育の扉を開いてみてください。子どものしぐさや行動が面白く見えて、より愛おしく、子育てがもっと楽しくなりますよ。肩の力を抜いて、成功も失敗も楽しみながら、お子さんと一緒に成長していきましょう。